見るだけの観光ではなく、ふれあいを大切に。
気づかなかった『能登』を再発見して下さい!!
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何度、能登へ来たことだろうか。
人によっては、「わざわざ埼玉県から車を飛ばして来るとは酔狂な奴」と思われるに違いない。
まして、僕の工房がある飯能市は、奥武蔵の山の中だ。都会の喧騒からしばし逃避したいというならなだしも、なぜ田舎なのか。
その答えは、能登という土地が持つ人とのほどよい距離感にある、と僕は思う。
山があり、海があり、田んぼがあり、人家がある。すべてが日常の景色の中に溶けこみ、そこに息づく人にも無理がない。自然に呼吸している。
だから、僕のような旅人にも断然、居心地がいいのである。
それは、懐かしいふるさとの実家に帰ってきたような安心感とでも言えようか。そして、つかず離れずで包んでくれる家族のようなあったかさがうれしい。
それに食だ。豊かで新鮮な食材と先人の知恵を宿す食文化は、常に新たな発見があって興が尽きない。
本音を言えば、こんな能登を自分だけの秘密基地にしておきたい。だが、この快感を親しい友人には教えてもやりたい。能登へ来るたび、いつもその相克に悩まされる。(家具作家:小島伸吾)

『草木染め』に熱中
曹洞宗の大本山総持寺の祖院がある門前町で、草木染めを体験した。教えてくれたのは、ついの住み処を求めて千葉から越してきた本間さんだ。
遠く日本海を見下ろす高台に自宅兼工房があり、周りは材料となる野草や木々の緑であふれている。僕と妻の美恵子は、夏用のストールを染めた。刈ってきたアカソの葉を煮だすと、湯気とともに甘茶のような香りが漂う。
外は蝉時雨。本間さんのお手製の桑の実酒に氷をひとつうかべ、ぐびりとひと口、暑気を払う。 染め液に紗の生地を浸す。自分の好きな色になるまで待って取り出し、乾かせば完成だ。 真剣ではあるが、仕事と違って遊び感覚で楽しめるところが何よりいい。
民宿に泊まり『定置網を引く
輪島市の西端にある民宿『漁火』。僕にはなじみのある宿である。黒光りする柱や梁の太さに、廻船問屋として栄えた住時がしのばれる。
部屋には、エアコンもテレビもない。布団も自分で敷く。えっと驚くかもしれないが、心づくしの馳走と主人の観られればそれで十分なのだ。 夕餉を待つ間、囲炉裏で地酒をやる。ぬる燗には輪島塗の猪口が合う。ゆるゆると一日の疲れが溶けだしたころ、「できたよー」の声。 豪快なタイの姿造り、サザエの刺身、ナメラバチメの塩焼き。どれも今日、海から揚がったものばかりだ。「これならもう猫もお手上げよ」。妻は骨だけにした焼き魚を指差して自慢する。うまいという月並みな言葉しか出てこない。 「明朝、晴れたら船を出すから乗っていかんか」と主人の下さん。 宿の沖に定置網があり、客にも引かせてくれるのだ。
『野集紙』を漉く
輪島の山あいの里で和紙を漉く遠見さんを訪ねることにする。遠見さんは、野草や四季の草花を漉きこんだ“野集紙”の名手として知る人ぞ知る存在だ。 工房は、小さな魚の群が踊る清流のわきにあった。中に入ると、原料の楮を満たした漉き槽が僕たちの到着を待っていた。
早速、挑戦する。「ざぶり」「じゃーぁー」。竹でできた漉き桁に原料をすくい、均等な厚さになるよう前後左右に素早く揺する。が、これがなかなかに難しい。 さらに、摘んできた花を散らしてもう一度、「ざぶり」「じゃーぁー」。これでオリジナルの野集紙の出来上がりである。
『シイタケ狩り』も楽しみ
珠洲市の川城農園:シイタケの原木が整然と並ぶコナラの林は、雨に洗われ深呼吸をするかのように静かだった。 この春に収穫して干したシイタケを見せてもらった。傘に肉割れの白い縞が花のように咲いたドンコと呼ぶ極上品。よほど丹精しないと、こんな生命力みなぎる肉厚のシイタケは出てくれまい。 慈しむようにほだ木を見て回る川城さんのがっしりとした背中に、農への情熱とふるさとを守る気概がにじんで見えた。